泌尿器科6

突然のわき腹痛…尿路結石かも?

~受診の目安と検査の流れ~

石川 勉(副院長)

番外編を経て、今回から再び泌尿器科の本筋に戻ります。今回のテーマは、ある日突然、悶絶(もんぜつ)するような痛みに襲われることもある『尿路結石』です。

群発頭痛、心筋梗塞に並ぶ、俗に「三大疼痛」「痛みの王様」とも称されるのが、泌尿器科の病気である『尿路結石』です。実は若者からご高齢の方まで、男女を問わず起こる可能性がありますが、頻度としては男性に多い病気です。もしご自身やご家族が痛みに襲われたときにどうすれば良いか、病気の原因から対応方法、治療方針までお話ししていきます。(※今回は、尿路結石のうち、腎結石・尿管結石に関するお話しです。)

1. 尿路結石の原因と、典型的な症状

● 尿路結石ができる仕組みと背景

尿路結石ができるメカニズムは、尿に溶け込んでいる成分(カルシウム、シュウ酸、尿酸など)の濃度が限界を超えて結晶化することから始まります(理科で行う塩の結晶を作る実験と原理は同じです)。この結晶が核となり、雪だるま式に成分が重なっていくと、やがて「石」となります。

尿中の成分濃度が高くなってしまう主な要因は以下の通りです。

・原因疾患:副甲状腺機能亢進症のようなホルモン異常のほか、痛風(高尿酸血症)や糖尿病、肥満といったメタボリックシンドローム(生活習慣病)が尿成分のバランスを大きく崩します。 ・嗜好と食生活:塩分や動物性タンパク質、糖分の過剰摂取は尿中のカルシウム排泄を増やし、リスクを高めます。また、シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、チョコレート、緑茶など)の摂りすぎも主要な原因となります。 ・生活習慣:そして最大の要因は「慢性的な水分不足」です。尿が濃縮されることで成分が結晶化しやすくなります。また、夕食から就寝までの時間が短い「夜遅い食事」は、就寝中に尿成分の濃度を急上昇させるため、結石形成の大きな引き金となります(夜間は生理的な機能として尿量が減るため、必然的に尿は濃くなります)。夕食から就寝までは4時間以上あけることが望ましいとされています。

なお、シュウ酸は腸の中で食事に含まれるカルシウムと結びつくことで、体内への吸収が抑えられます。「結石=カルシウムが原因」と考えて極端にカルシウムを控えると、かえって結石ができやすくなることが知られています。

水分については、尿が濃くなることが結晶化の引き金になるため、日頃からこまめに水分を摂ることが基本になります。具体的な目標量を含めた再発予防の考え方は、次回(第7回)で詳しくお話しします。

「石」は単なる『偶然の産物』ではなく、持っている病気や、日々の生活の積み重ねによって作られた『必然の結果』とも言えるのです。

● 尿路結石の症状

尿路結石は、その大半が尿を生成している腎臓で発生します。腎臓の中には、「腎杯(じんぱい)、腎盂(じんう)」といわれる尿が流れ出る広いスペースがあり、結石がこれらの広い場所にあるうちは、自覚症状はほとんど出ません。しかし、結石が腎盂からその先の「尿管」へと転がり落ちると状況は一変します。

漏斗(じょうご、ろうと)のような形をした広い腎盂に対し、尿管は全長約25〜30cm、内径はわずか数mmという非常に細長いホースのような形状をしています。結石がこの狭い尿管に詰まると、尿の流れが悪くなり、上流にある腎臓や尿管内に尿が溜まってしまい、内部の圧力が急上昇します(水腎症(すいじんしょう))。この急激な内圧の上昇が腎臓や尿管自体を強く刺激し、あの「のたうち回るような激痛」を引き起こすのです。あまりの痛みに吐いてしまうこともあります。また、結石が尿管粘膜と擦れて傷が入り、傷の程度によって血尿が出ることもあります。

結石が尿管に詰まる仕組みと水腎症腎臓で作られた尿は、漏斗のような形の腎盂から、全長25〜30cm・内径わずか数mmの細い尿管を通って膀胱へ流れます。結石がこの狭い尿管に詰まると、上流の腎臓や尿管に尿が溜まって内部の圧力が急上昇し(水腎症)、激しい痛みを引き起こします。結石が尿管に詰まると、なぜ痛い?腎臓から膀胱まで、尿の通り道でおきていること正常な尿の流れ腎臓腎盂尿管内径 数mm膀胱へスムーズに到達結石が詰まった状態水腎症尿が溜まり内圧が上昇結石が詰まる流れが滞り、激痛の原因に
図:結石が尿管に詰まる仕組みと水腎症。当院作成

2. 夜中に痛くなった!受診は今すぐ?朝まで待って良い?

「家で様子を見て良いのか、すぐに医療機関へ行くべきか」という判断は非常に悩ましいものですが、以下のポイントを参考にしてみてください。

まず、痛みの強さと、結石の大きさや水腎症の程度は必ずしも比例しません。そのため、受診の目安を一概に決めるのは現実的には困難です。もし「脇腹の痛み」と「血尿」が重なっているなら尿路結石の可能性が高いですが、痛みがそれほど強くないのであれば、夜間などに慌てて受診しなくてよい場合が多いです。

医療機関を受診した場合、総合病院のような夜間休日も検査体制が整っているところであれば、必要な検査を受けることができますが、それ以外の病院・診療所では、まずは鎮痛薬での対応が中心になることも多いです。もし自宅に鎮痛薬がある場合はそれを服用して、30分ほど経っても症状が変わらない、あるいは悪化するようなら受診を検討しましょう。

ただし、脇腹や背中の痛みは、心筋梗塞や大動脈解離といった、緊急対応を要する重大な病気が起きている可能性もあります。特に高血圧症や糖尿病などのリスク因子を持つ中高齢者の方は、安易に「結石だろう」と自己診断せず、早めに医療機関を受診することが大切です。

尿路結石を疑うときの受診の目安脇腹の痛みや血尿で尿路結石を疑うときは、まず体温を測ります。発熱(特に高熱)があれば、結石性腎盂腎炎の可能性があり、夜間や休日を問わず一刻も早い受診をおすすめします。発熱がなく痛みが強ければ受診を検討し、痛みが軽ければ慌てて夜間受診する必要はありません。いずれも平日・土曜の日中はなるべく早めの受診をおすすめします。夜中に痛くなった…すぐ受診すべき?*夜間・休日に症状が出たときの目安です脇腹・背中の痛み/血尿尿路結石を疑う症状まず体温を測る発熱はある?あり一刻も早く受診を結石に感染が加わる「結石性腎盂腎炎」のおそれ。夜間・休日を問いません。*糖尿病など免疫が下がる病気のある方は特に注意なし痛みの強さで判断強い痛み → 受診を検討鎮痛薬で30分ほど様子を見て改善しない/悪化 → 受診を検討痛みの強さと、結石の大きさ・危険度は必ずしも一致しません。脇腹・背中の痛みは、心筋梗塞や大動脈解離など重大な病気のことも。自己判断は禁物です。
図:夜間・休日に症状が出たときの受診の目安。当院作成

3. 「発熱」がある時は要注意!受診を急ぐべき理由

尿路結石による痛みは非常に辛いものですが、泌尿器科医が加えて注目している点は、「発熱(特に高熱)があるかどうか」です。

結石が尿管に詰まると尿の流れが悪くなり、上流に尿が溜まって水腎症を起こすことは先ほどお話ししましたが、溜まった尿が澱(よど)んでくると、細菌が繁殖して、感染症を引き起こす場合があります。これを「結石性腎盂腎炎(けっせきせいじんうじんえん)または閉塞性腎盂腎炎(へいそくせいじんうじんえん)」と呼びます。

この結石性(閉塞性)腎盂腎炎という病気は程度の幅があり、結石の大きさや詰まり具合(嵌頓の程度)によって、比較的軽度な炎症で済むこともあれば、細菌が血液に入り込み、全身の臓器の働きが低下する生命に関わる状態である「敗血症」へと至ることもあります。

尿路結石を思わせる「痛み」「血尿」が出た場合は、ぜひ体温測定を行い、「発熱」の有無を確認してみてください。特に、糖尿病や自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど)といった免疫力が低下しやすい病気を持っておられる方は、短時間で急激に重症化するリスクがあります。必ず体温測定を行い、微熱であった場合でも、夜間や休日を問わず、一刻も早い受診をお勧めします。

4. どのような検査を行い、どのように治療方針を決めるのか

医療機関を受診した後の診療の流れですが、まずは患者さんの状態を正確に把握することから始まります。その後、患者さんにご説明した上で、必要な治療を行っていきます。

● 主な診察、検査

1. 問診:症状発生の経過や、生活習慣などをお聞きします。 2. 身体診察:痛みの場所を正確に把握するため触診を行います。 3. 尿検査:血尿や、炎症細胞(白血球、感染の可能性)の有無を調べます。 4. 血液検査:腎臓の機能や、炎症の強さを確認します。 5. 画像検査(超音波・CT・レントゲン):結石の有無・位置・大きさや、水腎症・腎盂腎炎の有無・程度などを画像的に判断します。

受診された方に、これらの検査をすべて行うわけではなく、患者さんの年齢、背景、その時の状態に応じて、必要なものを行っていきます。

● 治療方針

・自然排石を待つ(様子見):結石のサイズが小さく(一般的に5mm以下)、感染症もない場合は、薬で痛みをコントロールしながら、おしっこと一緒に自然に流れ出るのを待ちます。結石が出やすくなるように生活指導(十分な飲水や運動)も行います。 ・投薬治療:個人差や詰まっている結石の位置・形状にもよりますが、やや大きな結石(7〜9mm程度)でも流れ出る可能性があります。この場合は、痛み止めに加えて、尿管を広がりやすくする薬を使って、排石を促します。 ・手術治療:結石が大きい(10mm以上)場合、小さいものでも嵌まり込んでいる場合は、手術治療(砕石治療)の適応になります。読んで字のごとく「石を砕く」治療で、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)と経尿道的砕石術(TUL)の2種類に大別されます。

また、先ほどお話しした結石性腎盂腎炎が点滴治療(抗生物質)だけでは良くならない場合、重症化リスクが高い、もしくはすでに重症化している場合は、感染症治療の一環として、「尿路ドレナージ」が必要になります。

・尿路ドレナージ:腎臓内に溜まった汚れた尿を体外へ流し出すために、「尿管ステント」や「腎瘻(じんろう)カテーテル」を挿入します。感染が活発な状態で砕石治療を行うと、より感染が重症化する恐れがあるため、まずは感染の鎮静化が必要不可欠です。

結石の大きさの目安と治療方針結石の大きさは治療方針を考えるうえでの目安のひとつです。一般に5mm以下では薬で痛みを抑えながら自然に流れ出るのを待ち、7〜9mm程度では排石を促す薬を使い、10mm以上や嵌まり込んだ結石では手術(体外衝撃波ESWL・経尿道的砕石術TUL)を検討します。大きさだけでなく、位置・形・感染の有無や年齢・背景に応じて総合的に判断します。結石の大きさと、治療の考え方大きさはあくまで目安。位置・形・感染の有無などで変わります小さい大きい約5mm約9mm自然排石を待つ目安:5mm以下感染がなければ、薬で痛みを抑えつつ、尿と一緒に流れ出るのを待つ+ 十分な飲水・運動投薬治療目安:7〜9mm以下やや大きくても流れ出る可能性があり、尿管を広げる薬で排石を促す+ 痛み止め手術治療(砕石)目安:10mm以上/嵌頓小さくても嵌まり込んでいれば適応。石を砕く治療を行うESWL / TUL*感染を伴うときは、まず尿路ドレナージ(尿管ステント等)で感染を鎮めることを優先します。受診された方の年齢・背景・その時の状態に応じて、必要な治療を選びます。
図:結石の大きさの目安と治療方針。当院作成

5. 「痛みが引いたからもう大丈夫」と放置してしまうリスク

さて尿路結石について色々なお話をしてきましたが、ここで補足ながら重要なことをお伝えさせてもらいます。それは、「尿路結石の痛みがあったけど消えた!=石が出た・治った!…とは限らない!!」という点です。

結石が体外へ完全に排出されて痛みが消えるのがベストですが、稀に「結石が詰まった状態に身体が慣れてしまう、または腎臓での尿産生が止まって水圧がかからなくなる」ことで、結石があるのに痛みが消えてしまうケースがあるのです。

これを長期間(数ヶ月〜数年)放置すると、水腎症が起きている腎臓の機能が損なわれ、最悪の場合、完全に機能が失われてしまう「無機能腎」を招く恐れがあります。受診を急ぐ必要はありませんが、痛みが治まった場合でも、診察・検査を受けて「本当に石がなくなったかどうか」を医師と一緒に確認することが、将来の健康を守ることに繋がります。

6. 最後に

尿路結石は、若者からご高齢の方まで誰にでも起こり得る、決して他人事ではない病気です。突然の激痛に驚かれることも多いですが、正しい知識と適切な受診があれば、過度に恐れる必要はありません。大切なのは、痛みの有無だけで判断せず、体の小さなサインを見逃さないことです。「もしかして?」と思ったら、どうぞ我慢せず、泌尿器科へご相談ください。

次回予告

第7回は、結石治療の「総仕上げ」として、2つの大切なテーマをまとめてお届けします。

  • ① 結石をその場で撃退!「内視鏡手術(TUL)」の正体(当院でも行っている治療です)
  • ② 手術は終わりではなく、始まり。「再発させない体作り」へ

参考:日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会・日本尿路結石症学会編『尿路結石症診療ガイドライン』