石川病院 / 泌尿器科

Benign Prostatic Hyperplasia

前立腺肥大症

尿の勢いが弱い、夜中に何度もトイレに起きる、出しきれた感じがしない。「年齢のせいだから」と受け止めておられる症状の中には、治療で楽になるものがあります。検査から薬物療法、レーザーによる手術、その後の通院まで、当院で続けて対応します。

01

こんな症状はありませんか

次のような症状に心当たりがある方は、前立腺肥大症が関係している可能性があります。

尿の勢いが弱くなった排尿に時間がかかる夜中に何度もトイレに起きる出しきれた感じがしない急に強い尿意が起こる尿が途中で途切れるお腹に力を入れないと出ない尿がまったく出なくなった尿道カテーテルを入れたことがある
排尿の悩みは人に相談しにくく、「歳をとれば誰でもこうなる」と考えて受診が遅れがちです。 しかし、前立腺肥大症は検査で状態を数値として確認でき、薬や手術で改善が期待できる病気です。 まずは今どういう状態なのかを知るところから始めていただければと思います。
02

前立腺肥大症とは

前立腺は膀胱のすぐ下にあり、尿の通り道である尿道を取り囲んでいる男性だけの臓器です。 加齢に伴って前立腺の内側(内腺)が大きくなると、内側を通る尿道が圧迫されて狭くなり、 尿が出にくくなったり、膀胱に尿が残ったりします。これが前立腺肥大症です。

さらに、出しにくい状態が続くと膀胱の筋肉に負担がかかり、 尿をためる働きにも影響が出て、頻尿や急に我慢できないほどの尿意(尿意切迫感)を伴うようになります。 「出にくい」症状と「近い」症状が同時に起こるのはこのためです。

前立腺と尿道の関係

正常な状態膀胱正常な前立腺

尿道が十分な太さを保っており、尿がまっすぐ流れます。

前立腺肥大症の状態膀胱肥大した前立腺

大きくなった前立腺が尿道を左右から圧迫し、尿の通り道が狭くなります。 膀胱は尿を押し出そうとして壁が厚くなります。

※ 構造をわかりやすく示すための模式図であり、実際の形状・比率とは異なります。

前立腺の組織学的な肥大は加齢とともに増え、80歳代では約8割にみられるとされています (出典: 日本泌尿器科学会編『男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン』)。 ただしこれは顕微鏡で見たときに肥大があるかどうかの割合であり、 肥大がある方全員に症状が出るわけでも、治療が必要になるわけでもありません。 治療の要否は、症状の程度と検査所見、そして生活への支障をあわせて判断します。
03

そのままにしておくと起こりうること

症状が軽いうちは経過をみることもありますが、進行すると次のような状態につながることがあります。

尿閉(尿が出なくなる)

尿がまったく出せなくなり、下腹部が張って強い痛みを伴う状態です。尿道からカテーテルを入れて尿を出す処置が必要になります。飲酒や風邪薬をきっかけに突然起こることがあります。

尿路感染・膀胱結石

膀胱に尿が残った状態が続くと細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎や前立腺炎を繰り返すことがあります。残った尿の中で結晶が固まり、膀胱結石ができることもあります。

腎機能への影響

膀胱の内圧が高い状態が長く続くと、腎臓から膀胱へ尿が流れにくくなり、腎臓が腫れる水腎症や腎機能の低下を招くことがあります。

血尿

大きくなった前立腺の表面の血管から出血し、尿に血が混じることがあります。血尿は他の病気が原因のこともあるため、原因を確かめる検査が必要です。

尿がまったく出ず、下腹部が張って苦しい場合は尿閉が疑われます。 我慢せず、泌尿器科(電話 0868-26-2188)へご連絡ください。 診療時間外の場合は、かかりつけの医療機関または救急医療機関へご相談ください。
04

診断のための検査

いずれも外来で受けていただける検査です。症状の程度を数値で確認し、他の病気が隠れていないかもあわせて調べます。

問診・症状スコア(IPSS)

排尿の症状を7つの質問で点数化し、症状の程度と生活への支障を客観的に把握します。治療の効果判定にも用います。

尿流測定(ウロフロメトリー)

専用の装置に排尿していただき、尿の勢いと排尿にかかる時間を波形として記録します。痛みはありません。

残尿測定

排尿後に膀胱へどれだけ尿が残っているかを超音波で測定します。針を刺すことなく、その場で結果がわかります。

超音波(エコー)検査

前立腺の大きさや形、膀胱壁の厚み、腎臓の状態を確認します。治療方針を決めるうえで重要な情報になります。

PSA検査(血液検査)

前立腺がんの可能性を調べる血液検査です。前立腺肥大症でも数値が上がることがあるため、結果は他の所見とあわせて判断します。

尿検査

血尿や細菌感染の有無を確認します。膀胱がんなど他の病気との区別のためにも行います。

IPSS(国際前立腺症状スコア)の目安

軽症 0〜7点中等症 8〜19点重症 20〜35点

出典: 日本泌尿器科学会編『男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン』。 IPSS はご本人の自覚症状を点数化する問診票であり、これだけで診断や治療方針が決まるものではありません。 同じ点数でも前立腺の大きさや残尿量は人によって異なるため、検査所見とあわせて総合的に判断します。

05

治療の選択肢

前立腺肥大症の治療は、症状の程度と検査所見に応じて段階的に選びます。 すべての方に手術が必要なわけではありません。

  1. 1
    経過観察・生活の見直し

    症状が軽く生活に支障がない場合は、定期的に経過をみます。就寝前の水分やアルコール、カフェインの摂り方、便秘や冷え、内服中のお薬の見直しで改善することもあります。

  2. 2
    薬物療法

    尿道の緊張をゆるめて尿を出しやすくする薬(α1遮断薬・PDE5阻害薬)や、前立腺そのものを小さくする薬(5α還元酵素阻害薬)などを、症状と前立腺の大きさに応じて使い分けます。ためる側の症状が強い場合は、過活動膀胱の薬を併用することもあります。

  3. 3
    手術による治療

    薬で十分な改善が得られない場合や、尿閉・膀胱結石・腎機能への影響がある場合には、尿道の通り道を確保する手術を検討します。

薬で改善が乏しいとき、手術を考える目安

次のような場合は、薬を続けるよりも手術のほうが利点が大きいと考えられます。担当医から手術の説明を行い、ご希望をうかがったうえで方針を決めます。

  • 薬を服用しても症状が改善しない、または副作用で続けられない
  • 尿閉を起こした、あるいは繰り返している
  • 尿道カテーテルが入ったままになっている
  • 残尿が多い状態が続いている
  • 膀胱結石ができている
  • 尿路感染を繰り返している
  • 腎機能の低下や水腎症がみられる
  • 前立腺からの出血(血尿)を繰り返している
06

手術による治療

いずれの手術も、お腹を切ることはありません。尿道から内視鏡を挿入し、 尿道を圧迫している前立腺の内側を取り除いて、尿の通り道を確保します。 前立腺の大きさや併存する病気、内服中のお薬の状況を踏まえて、適した方法をご提案します。

HoLEP

ホルミウムレーザー前立腺核出術

Holmium Laser Enucleation of the Prostate

内視鏡を尿道から挿入し、肥大した内腺をホルミウムレーザーで外腺からくり抜きます。 くり抜いた組織はいったん膀胱内に移し、モーセレータという器械で細かく砕いて吸引し、体外へ取り出します。 取り出した組織は病理検査に提出し、がんが含まれていないかを確認します。 レーザーで止血しながら進めるため出血が少なく、前立腺が大きい場合にも対応できる方法です。

TURP

経尿道的前立腺切除術

Transurethral Resection of the Prostate

内視鏡の先端に付けた電気メスの輪で、尿道を圧迫している前立腺の組織を少しずつ削り取ります。 長く行われてきた標準的な手術方法で、前立腺の大きさや形状によってはこちらが適していることがあります。 削り取った組織は同じく病理検査で確認します。

使用する機器について

当院ではホルミウム・ヤグ(Ho:YAG)レーザー治療システムを用いて HoLEP を行っています。 装置の詳細は泌尿器科のレーザー治療システムをご覧ください。

手術に伴うリスク・合併症

前立腺肥大症の手術は広く行われている治療ですが、次のような合併症が起こる可能性があります。 手術前に担当医から改めて説明を行い、ご納得いただいたうえで実施します。

出血

手術中・手術後に出血することがあります。膀胱内を洗浄して対応しますが、程度によっては輸血や追加の処置が必要になる場合があります。

一時的な排尿時痛・頻尿

カテーテルを抜いた後、しばらく排尿時の痛みや尿の回数の増加がみられることがあります。多くは時間の経過とともに落ち着きます。

尿失禁

手術後に尿が漏れることがあります。多くは一時的ですが、長引く場合には骨盤底筋体操などの対応を行います。

逆行性射精

射精した精液が膀胱側へ流れる変化が高い頻度で起こります。妊娠を希望される場合は必ず事前にお申し出ください。

尿道狭窄

内視鏡を通した尿道が、後になって狭くなることがあります。排尿の勢いが再び弱くなった場合はご相談ください。

感染・その他

尿路感染、被膜の損傷、まれに再手術が必要となる場合があります。持病やお薬の内容によってリスクは異なります。

07

腰椎麻酔での対応について

当院の前立腺肥大症の手術は、腰椎麻酔(下半身の麻酔)で行います。 意識はありますが、下半身の痛みは感じません。

前立腺肥大症の手術を受けられる方の多くはご高齢で、 心臓や呼吸器、脳血管の病気をお持ちの方も少なくありません。 全身麻酔に不安をお持ちの方、他の医療機関で全身麻酔のリスクについて説明を受けた方にとって、 下半身のみの麻酔で手術を受けられることは具体的な選択肢になります。

背中から細い針で麻酔薬を注入し、下半身の感覚を一時的に遮断します。 手術中は目が覚めた状態ですが、痛みは感じません。眠っていたいという方には、 全身状態を確認したうえで鎮静を併用することがあります。

麻酔の方法は、持病・内服中のお薬(特に血液をさらさらにする薬)・背骨の状態などにより、 お一人ずつ判断します。腰椎麻酔が適さないと考えられる場合には、その理由をご説明したうえで 他の方法や他の医療機関での治療をご提案することがあります。
08

受診から手術までの流れ

進み方の順序は次のとおりです。検査の結果やお身体の状態により、順序や内容が変わることがあります。

  1. 1
    受診・問診

    症状の経過をうかがい、IPSS(症状スコア)で現在の状態を確認します。紹介状はなくても受診いただけます。

  2. 2
    検査

    尿検査・尿流測定・残尿測定・超音波検査・血液検査(PSAを含む)を行い、前立腺の状態と他の病気の有無を確認します。

  3. 3
    結果説明と治療方針のご相談

    検査結果をお伝えし、経過観察・薬物療法・手術それぞれの利点と注意点をご説明します。ご希望をうかがったうえで方針を決めます。

  4. 4
    手術前の準備

    血液検査・心電図・胸部レントゲンなどで全身状態を確認します。血液をさらさらにする薬を服用中の方は、処方元の医師と調整のうえ休薬などの対応を決めます。

  5. 5
    手術(腰椎麻酔)

    尿道から内視鏡を挿入し、前立腺の内側を取り除きます。手術後は尿道にカテーテルを留置し、膀胱内を洗浄します。

  6. 6
    入院・カテーテル抜去

    尿の色を確認しながらカテーテルを抜き、ご自身で排尿できることを確認します。入院期間は前立腺の大きさや経過により異なります。

  7. 7
    退院後の外来通院

    排尿の状態を確認しながら、必要に応じて内服の調整を行います。

※ 検査・手術の日程は、お身体の状態と診療の状況にあわせて調整します。

09

手術のあとも、同じ医師が続けて診ます

前立腺肥大症は、手術で尿の通り道を確保すれば終わりという病気ではありません。 長く排尿しにくい状態が続いていた方では、膀胱の働きが戻るまでに時間がかかり、 手術後もしばらく頻尿や尿意切迫感が残ることがあります。 また、前立腺肥大症と前立腺がんは別の病気であるため、手術後も PSA の確認は続けていく必要があります。

排尿状態の評価

尿流測定・残尿測定を用いて、手術後の排尿がどこまで改善しているかを数値で確認します。

内服の調整

頻尿や尿意切迫感が残る場合、過活動膀胱の薬を含めて内服内容を見直します。不要になった薬は整理します。

PSAの経過確認

手術後も定期的に PSA を確認し、前立腺がんの可能性について継続してフォローします。

当院では、外来での診断から手術、その後の通院までを同じ泌尿器科の医師が担当します。 経過の中で気になることが出てきたときに、これまでの検査結果を把握している医師にそのまま相談していただけます。

10

費用について

前立腺肥大症の検査・薬物療法・手術は、いずれも公的医療保険の適用となります。 窓口でお支払いいただく金額は、年齢や所得に応じた自己負担割合により異なります。

入院・手術で自己負担額が高額になる場合には、高額療養費制度の対象となります。 あらかじめ「限度額適用認定証」(またはマイナ保険証による限度額情報の提供に同意いただく方法)をご用意いただくと、 窓口でのお支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。 手続きについては入院前にご案内します。

個別の費用の目安については、加入されている保険や所得区分により異なります。 医事課(電話 0868-26-2188)へお問い合わせください。
11

よくあるご質問

Q

薬を飲み続ければ、手術は避けられますか。

A

薬物療法で症状が落ち着き、そのまま経過をみていける方は少なくありません。一方で、尿が出なくなる(尿閉)ことを繰り返す、残尿が多い、膀胱結石や腎機能への影響が出ているといった場合には、薬だけでは改善が難しく、手術をお勧めすることがあります。どちらが適しているかは検査の結果とご本人の希望を踏まえて相談のうえ決めていきます。

Q

高齢ですが、手術を受けられますか。

A

年齢だけで一律に判断することはありません。心臓・呼吸器・脳血管などの持病、内服中のお薬、日常生活の状況を確認したうえで適応を判断します。当院では腰椎麻酔で手術を行っており、全身麻酔に不安をお持ちの方についてもご相談いただけます。ただし全身状態によっては手術をお勧めしない場合もあります。

Q

手術を受けると、性機能はどうなりますか。

A

前立腺の内側を取り除く手術のため、射精した精液が膀胱側へ流れる「逆行性射精」が高い頻度で起こります。妊娠を希望される場合には手術前に必ずお申し出ください。勃起の機能そのものは手術によって大きくは変わらないとされていますが、個人差があります。気になる点は術前にご確認ください。

Q

前立腺肥大症と前立腺がんは違うのですか。

A

別の病気です。前立腺肥大症が前立腺がんに変化するわけではありません。ただし、どちらも加齢とともに増える病気であり、同時に存在することがあります。そのため当院では、排尿の症状で受診された方にもPSA検査などを行い、がんの可能性についてあわせて確認しています。

Q

尿道カテーテルが入ったままですが、相談できますか。

A

ご相談いただけます。尿閉のためにカテーテルを留置されている方は、手術によってカテーテルが不要になる可能性があります。他の医療機関でカテーテル管理を受けている方も、紹介状の有無にかかわらず受診いただけます。

Q

検査だけ受けることはできますか。

A

できます。排尿の状態を調べる検査(尿流測定・残尿測定・超音波検査など)は外来で行えます。まず現状を把握して、治療が必要かどうかを一緒に確認するところから始めていただいて構いません。

12

外来のご案内・お問い合わせ

泌尿器科の診療日・担当医は、外来担当医表をご確認ください。 初めて受診される方は、健康保険証(またはマイナ保険証)と、 服用中のお薬がわかるもの(お薬手帳)をお持ちください。紹介状は必須ではありません。

お問い合わせ

医療法人東浩会 石川病院(代表)

0868-26-2188

〒708-0841 岡山県津山市川崎554-5

関連ページ